『ごめん、消しゴムかして』きっかけは真帆からの一枚の付箋だった。真帆は、女の私でさえ思わず見惚れるほどの美人でクラスの人気者。そんな真帆と仲良くなったのは、席替えで隣になった次の日、あれ以来、私たちは一緒にお弁当を食べたり放課後や週末に遊ぶようになった。それから一年たった今日。いつもの教室にいつものクラスメイト、いつもと変わらない日常で真帆の様子だけがいつもと違っていて、お弁当の会話もぎこちなかった。無言の帰り道、分かれ道の信号が青になりいつもよりちょっと明るめに「また明日ね」というと、真帆は鞄から封筒を取り出しうつむいたまま差し出した。「これ…何…?」「開けないで!…帰ってから一人で読んで。」封筒をあけようとした私を制止すると、目を合わせることもなく、点滅し始めた横断歩道を走っていった。