最深部の更に奥、光に導かれるままにすすんだ先には、巨大な壁画があった。
それはただの壁画ではなく、
初代皇帝のチチカカ湖降臨や神殿の建設などが描かれていた。
「これは……インカの歴史だ」
洞窟の奥にあったのは、
保護・加筆され代々受け継がれた歴史の壁画だった。
これを見た私は、ピサロはなぜここを隠し日誌に書き記したのかを理解した。
当時、異文化・異国侵略の際、そこにある全ては破壊・強奪された。
これが表にでれば破壊され彼らの歴史は完全に奪われてしまう。
ではキープを高台に戻しこのまま洞窟を封印するべきか?
しかし、壁画にたどり着くのに数十年を費やすほど複雑な洞窟だ。
次の探検家がキープのみでこの壁画までたどりつけるとは限らない。
そう考えたピサロは、壁画を表にださず日誌に書き記した。
決して興味本位では届かぬよう難解な暗号とすることで、
いつの日か、この本当の価値を見出す探検家が到達することを願って。
そして、今、我々調査隊が数百年の時をこえ壁画にたどりついたのだった。
*
それから数年後、
壁画はペルー政府の管理のもと、文化遺産として保護・研究されることとなった。
そして、私に一通のメールが届いた。
―壁画の調査を依頼したい―
私はペルー行きの飛行機へと乗り込んだ。
ピサロの託した夢と共に。
あとがき
プレイ頂きありがとうございます。
よりお楽しみ頂くために一部補足説明させていただきます。
■歴史とモチーフとの絡み
16世紀、インカ帝国は内戦による衰退やスペイン人の侵略、天然痘などで滅亡しました。
この時に軍を率いてインカの侵略したのがフランシスコ・ピサロで、
殆どの金細工が延べ棒にされるなどインカの歴史が次々に奪われました。
それゆえ、スペインでは英雄とされながらインカを滅ぼした人物ともいわれています。
そこで『もしピサロが歴史を残す道を選んだら?』として構成しました。
■宝が壁画の理由
インカには文字文化がなかったため、
ほんの数百年前(日本は室町時代)にも関わらず多くのことが謎に包まれています。
そんな中「壁画」は手がかりの一つになっています。
発見された壁画より「おそらくこうだろう」と研究されていることもあり、
ピサロが保護した歴史(壁画)を見つけるラストにしました。
■STEP2の洞窟(迷路)
ペルーには、方向感覚がわからなくなるくらい入り組んで解明されていない洞窟があり、
その中には未発見のインカの宝が眠っているのではないかとされています。
そのため、洞窟を見つけて最深部にもぐり壁画をみつける流れにしました。
また、入り組んだ洞窟を表現するため、
縦横きれいな迷路ではなく、左右がわからなくなるような迷路にしています。
■STEP2のdosの12角形の色塗り
ペルーにはたくさんの石の壁があり、
「カミソリの刃1枚も通らない」と言われるほど精密に隙間なく組まれています。
その石は四角形に整形されたものだけでなく、
「12角の石」(12角形の巨大な岩)をはじめ多角形の岩を組んだ壁もあります。
精密さや大きさから現代でも再現は難しく、どうやって組んだのかいまだ解明されておりません。
謎にするだけなら八角形くらいまでで十分ですが、あえてこのような謎とデザインにしました。
■最深部の聖域に一筋の光
インカ文明では太陽神を崇拝し、聖域と呼ばれる場所がいくつかあります。
その中に、太陽が差し込むよう意図的に隙間を作った石の壁があります。
暦として使ったのか、宗教上のものなのかいまだだ解明はされていませんが、
もし実際に歴史の伝承者がいたとすると、
そこをただの洞窟とせず、聖域とするだろうと考え、
崇拝する太陽が夏至にのみ聖域を照らし、壁画までを導くという流れにしました。
インカ文明の背景を知ることで、よりお楽しみいただけるかと思います。
ありがとうございました。
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