本が示した場所は、曽祖父が亡くなった部屋だった。
畳の下に床板を外した跡を見つけた僕は、その縁の下(床下)の土を掘りはじめた。
掘り始めてしばらくすると、そこには陶器の壺があった。
地面からだして土を払い蓋をあけると、
中には一通の手紙と、桔梗の花をガラス玉にあしらった一本のかんざしが入っていた。
たしか桔梗の花言葉は――永遠の愛
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当時、結核は不治の病。
一人隔離され、ただゆっくりと死を待つのみだった。
そんな中、曽祖父は一体どんな気持ちだったのだろうか。
曾祖母への贈り物として用意していたかんざし。
枕元に残していたのならば、それはただの遺品となってしまう。
かといって生きている間に渡したならば、現実を嘆き悲しませただろう。
だからこそ曽祖父は、死してなお、贈り物とするために書物に書き残した。
学問が好きな曾祖母のため、二人が過ごした家を使って。
きっとこのかんざしをみつけた時、曾祖母にとっての最期の記憶は、
『悲しき別れ』から『永遠の愛』へと上書きされたことだろう。
もし、この本が曾祖母の手に渡っていたのなら……
僕は壺を抱え、二人の眠る墓へ向かった。
線香の香りが墓石を包み込むころ、本とかんざしを置き、丁寧に手紙を開封した。
=結=
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